いばらきフードツーリズムVOL.1

IBARAKI FOOD TOURISM
利根川流域に牛飼う人々。
開拓の歴史と風景に
出会う旅
  • おいしく、めぐる。いばらきのフードツーリズム。
  • IBARAKI FOOD TOURISM 01
 緑豊かな草原でのんびりと牛が草をはむ、そんな牧歌的な光景に癒される人も多いでしょう。実はここ茨城でも大規模に牛の飼育を続けてきた地域があります。戦後満州から引き揚げてきた開拓団の人々が、再び農業で身を立てるという夢を描いて汗を流してきた、利根川左岸の広大な平地です。思うようにはいかない自然を相手に、営々と努力してきた人たちのおかげで、このおおらかで気持ちの良い景観が維持されています。
土地に歴史あり空と大地の呼吸のはざま川辺に牛のいる風景
夏の間は一晩中を涼しい牧場で過ごし、朝靄のなか満足げに牛舎へと帰っていく牛たち。
気候、地理、生育環境など、テロワールの概念で語ることができるこの牧場は、
昭和22年に入植した初代の人々が理想とした豊かな農業を、今も追求し続けています。
新利根協同農学塾農場

牛と環境と人間との
理想のバランスをめざして
 ただ生活のためではなく、読書や趣味に興じる余暇を持ち、文化的な協同農業を築こうという理想に燃えていた先人たち。その夢を引き継ぎ今につないでいる上野さんですが、泌乳牛を放牧で飼うことの喜びと困難とが常に対峙しています。広さと牧草の生育状況と牛の数と、少しでも人が欲をかけばそのバランスは崩れてしまう。この酪農形態の存続は、自然の循環に許される、いい塩梅を守れるか否かにかかっています。
  • 早く外に出たいという子もいれば、インドア派の牛もいる。喜怒哀楽を通わせながら、牛と人とがもちつもたれつ。
  • 73年前、当時としてはめずらしく景観の美しさにも配慮して設計された集落。並木道には異国の風情が漂う。
  • ここで産まれた雌牛は一生涯をここで過ごす。牛が安心できる環境や生乳の尊さを伝えながら、活かす道を模索する。
INFO.

新利根協同農学塾農場
茨城県稲敷市市崎 2431‐1
TEL.0299-79-2021
http://blog.livedoor.jp/kurumiruku2009/
新利根チーズ工房

チーズ作りはサイエンスと
ファンタジーの融合
 畜産試験場の職員時代にチーズ造りの魅力に開眼し、修行を経て2017年末、新利根協同農学塾農場の敷地内に工房をオープンした西山さん。毎朝分けてもらう搾りたての生乳が原料です。母牛の系統、与えられた餌、菌を醸成する空気に至るまで、すべて稲敷産ですから、生粋のテロワールチーズと言えるでしょう。製造法や味覚を数値的に検証すると同時に、目に見えない菌たちをいかに喜ばせるかに心を砕く毎日です。
  • 熟成の初期段階は水分の偏りを防ぐため、定期的に上下を反転。2ヶ月後の出荷時には二回りほど小さくなる。
  • 雲間から陽が射すように、白カビに覆われた表面にリネンス菌のオレンジ色が顔を出してきた「常陸晴」。
  • 原料となる生乳は搾乳から24時間以内を使用。放牧牛の生乳の良さが熟成チーズのコクと味わい深さに表れてくる。
INFO.

新利根チーズ工房
茨城県稲敷市 うし新田1510-6
TEL.0299-94-3004
IBARAKI FOOD TOURISM 02 水害との闘いの歴史を経て守り抜いてきた酪農いまでは郷土の特産品に
大八洲開拓団が最初に入植した流作地区は、たびたび水害に見舞われる河川敷でした。
その後牛舎は高台に移設され、広大な跡地は牧草の栽培に活用されています。
家族同然に育ててきた牛の生乳は、いつしか故郷の味と呼ばれるようになりました。
大八洲開拓農協

新鮮な生乳から作られる
こだわりの乳製品
 戦後満州から引き揚げてきた大八洲開拓団。80戸の大所帯が共に生きていける新天地を探し求め、たどり着いたのが利根川周辺でした。当時は堤防もなく、毎年のように水害に見舞われる地域。台風が来るたびに千頭もの牛や家財道具を遠い土手の上まで移動させるという、とてつもない労力を払って守り抜いてきた酪農です。そこから生まれたヨーグルトは、やがて給食に出されると歓声のあがる、地域の特産品になりました。
  • 牛飼いのエキスパートが飼育を担当。受賞歴もある優良な血統を、繁殖から一貫して手がけている。
  • 牛に与えるのは牧草と穀物のみ。生草や乾草などの粗飼料は、すべて自ら栽培したものでまかなっている。
  • 濃厚でおいしいと評判の牛乳から加工品を作る「ミルク工房もりや」を立ち上げ。直売所は地元の人のオアシス。
INFO.

大八洲開拓農業協同組合
茨城県守谷市板戸井2175
TEL.0297-48-1423
http://ooyasima.jp
ミルク工房もりや

子どもから大人まで大好き
「のむヨーグルト」
 発酵によって引き出された自然な甘さとやさしい酸味。飲みやすいと評判の「のむヨーグルト」は、香料や安定剤などは一切使用せず、良質な生乳とシンプルな素材から作られています。繊細な温度管理をしながら20時間以上かけてじっくりと熟成。時間をかける昔ながらの製法ならでは、雑味のないきれいな味わいが楽しめる逸品です。2020年夏、この大人気ヨーグルトを素材に用いた、期待の新商品が発表されました。
  • 季節や天候など、さまざまな要因によって生乳のコンディションは変化。作り方を微調整していつもの味に仕上げる。
  • 「のむヨーグルト」は給食でも大人気。ヨーグルトが苦手な子でも、これなら飲める!と喜ばれている。
  • ひんやりさっぱりの「フローズンヨーグルト」と、ミルキーでリッチな味わい「ヨーグルトジェラート」が新発売。
INFO.

ミルク工房もりや
茨城県守谷市立沢2058
TEL.0297-47-8639
http://milk-moriya.com